あなたの心と身体は、上手に休めていますか?
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精神科医である著者が、発達障害であることに気付いていない人やグレーゾーンの人が過剰適応から抜け出す方法を、図解やマーカーを使った文章で分かり易く解説している本です。
誰でもその環境に馴染もうと一定努力しますが、特に、発達障害であることに気付いていない人やグレーゾーンの人は、職場や学校で無理に場に合わせようとすることで、「過剰適応」になってしまっていることが多いと著者は警鐘を鳴らします。
Part1では、過剰適応の発生するメカニズムを分析します。
- まわりに合わせることに必死・本当の自分を隠し続けるのは、過剰適応のサインであること
- 「大人の発達障害」とは、能力が少し凸凹であり、「大人になってから」普通(定型)の社会で生きづらいこと(=子どものときはさほどでもない。)
そのため、がんばれば「普通」に届くと信じ、他人にはできて普通・当たり前だが、本人にとっては限界ギリギリの努力を続けてしまう(周囲から求められてしまう)こと
- 過剰適応の背景には、
- 過去の疎外体験から、「絶対に失敗できない」と自分を追い詰める
- どんなに頑張っても「もっとがんばれ」と言われる
- 「できる」ところで必死になってしまう。そこまでしないと居場所がない
という原因があること
- その結果、二次障害の危険が高まり、疲れを放置すると、適応障害やほかの病気を招く危険性も高くなること
著者は、「疲労困憊していないか?まず、自分の疲れに気づく」ことが重要であると言います。
Part2では、過剰適応を起こしやすい発達障害3タイプから自分自身を理解することに焦点を当てます。
なお、ここでは、グレーゾーンのほか、ASD(自閉症スペクトラム)、ADHD(注意欠如・多動症)、DCD(発達性協調運動症)について詳しく述べられています。
Part3では、過剰適応から抜け出す方法についてです。
- 大人の生活時間割で、脳への負担を軽くすることが大事。脳への負担を軽くする生活の仕組み作りが、多岐にわたり図解されます。
- 発達障害は脳の機能の不具合が原因であるからこそ、とにかく寝ることで脳を休ませることが大事。
脳疲労を取り除く生活のしくみにおける7つのポイントは次のとおり- 平日・休日を問わず、起床時間を一定にする
- 朝食をとって、体を動かす
- 終わらせたい大事な案件は一日ふたつまで
- 終わりの時間が来たら作業は強制終了
- 有酸素運動&筋トレを習慣にする
- スマホ&パソコンは寝る1~2時間前まで
- 入眠儀式で就寝時間に眠りにつく
最終章(Part4)は、二次障害を防ぐために医師と二人三脚で発達障害と向き合うことの重要性を、医学的な視点で、分かり易く説きます。
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新年度は目前です。
入学・入社・転職…人生の節目としてプラスのイメージで語られることの多いこの時期ですが、同時に、慣れない環境で神経を大いに消耗させる時期でもあります。
「脳を休める生活習慣」等日常のライフハックを取り入れることはもちろん重要ですが、何よりも今一度、「自分自身(or子ども)の心と身体は上手に休めているか?」を自問してほしいと思います。
そして、もしお手伝いが必要なのであれば、誰かにSOSを出してほしい、と心から思います。
95頁 定価(本体1500円+税)ISBN978-8047-6413-9 C0011