この子は本当に「発達障害」ですか?
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「発達障害」という言葉が広く知られるようになってずいぶん経ちました。
この本は、「発達障害」と間違われる子が増えていること、「発達障害と間違われる状態(=発達障害もどき)」から抜け出す方法についての脳機能や生活リズム(特に睡眠)等が、小児科医の視点から書かれています。とても興味深い内容でした。
令和4年1月から2月にかけて行われた、文部科学省の通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒は、その調査結果を見ると、10年前に比べると著しく増加しています。
「学習面又は行動面で著しい困難を示す」項目は、平成14年→6.3% 平成24年→6.5% 令和4年→8.8%となっています。
行動面の困難とは、「不注意」または「多動性―衝動性」又は「対人関係やこだわり等」です。
これらの数字から、学校、幼稚園、保育園の先生はもちろんのこと、保護者や様々な方々の発達障害に対する認識が高まっていきました。
その中には早期発見、早期療育で改善していった例も多いと思われます。
一方で、本書の著者である成田奈緒子氏は、
- 『発達障害もどき=発達障害の診断がつかないのに、発達障害と見分けのつかない症候を示している状態の子どもが増えた』
- 『脳の発達においては、生まれて5年間は「動物として生きていくためのスキルの獲得」が優先される』
- 『生活リズムが乱れ電子機器を多用すると、この原始的な脳の発達が乱れ、脳機能のバランスが崩れるため、発達障害と同じような行動を見せる』
と指摘します。
この本はそうした指摘だけにとどまらず、では発達障害もどきから抜け出すにはどうすればよいか?という読者の疑問にも、脳の構造等の根拠を示しながら丁寧に答えてくれており、実用的です。
対応には、何か特別なことが必要なのでしょうか?著者は言います。
『子どもに与えるべきは「寝る・食べる・逃げる」というスキル』であると。
181頁 定価:1050円+消費税 ISBN978-4-413-04665-7